介護を学ぶ学生にインタビュー
一緒に楽しむ。幸せを受け取る。
学んで知った介護のリアル
北海道音更町:帯広大谷短期大学
※写真左から
村井 彩花さん
北海道芽室町生まれ。帯広大谷短期大学社会福祉科 介護福祉専攻2年。
岸塚 紗菜さん
北海道芽室町生まれ。帯広大谷短期大学 社会福祉科 介護福祉専攻2年。
進路選択に迷っていた時介護の仕事に興味が湧いた
─介護職に興味を持ったきっかけについて教えてください。
岸塚私が幼い頃から母がデイサービスで働いていて、よく連れて行ってもらっていたんです。そこは機能訓練型のデイサービスで、利用者さんとゲームをしたり、ランニングマシンで一緒に走ったりして、おじいちゃんおばあちゃんと過ごすのは楽しいなあ、と感じていました。高校2年になって進路を考えた時、そのことをふと思い出したんです。特にやりたいことがなく進路を迷っていたので、楽しい思い出がある介護の道に進んでみようと思いました。
村井私も同じく高校2年の進路選択でやりたいことが見つからなくて、進学説明会で帯広短期大学を知りました。いろいろな学科や専攻がある中で興味が湧いたのが、介護福祉専攻です。ちょうど介護業界の人材不足や介護施設での高齢者虐待などのニュースを見聞きしていたこともあり、私にもできることがあるかな、と思い入学しました。
介護職の先輩である母相談相手になってくれた
─介護職を目指すことについて、ご家族の反応はどうでしたか?
岸塚介護職の先輩である母に相談し、仕事について詳しく聞きました。「きつい」「汚い」と言われる介護の仕事を、母はどうして長く続けられるんだろう?と思ったんです。いま母は訪問介護で働いているんですけど、料理の味付けや家事のやり方は利用者さんによってみんな違うそうです。母は「一人ひとりのことを考えて、喜んでもらえるように工夫するのが楽しい」と話してくれました。利用者さんのことを思いながら、自分も楽しんで働いている母がすごく素敵で、私もやっ てみたいという気持ちが強くなりました。
村井私の母も以前介護職をしていて、今は福祉用具の会社で働いています。母は介護の現場を知る立場から、同じ道を選んだ私の良き相談相手になってくれています。入学後は同じ目標を持つ仲間がいるので心強いですね。不安や悩みがある時は友達同士で励まし合っています。
技術だけじゃない。楽しいだけじゃない。介護の学びは奥深い
─入学後はどのようなことを学んでいますか?
岸塚1年前期は介護福祉の理念や歴史などの座学を中心に、ベッドメイキングやシーツ交換、体位交換などの実技も学修しました。印象的だった授業は「福祉心理学」。介護=食事や入浴などの介助だと思っていたけれど、利用者さんの心理状態やコミュニケーションを意識することも重要だとわかり、いろいろな発見がありました。
村井専門領域の授業では高齢者だけでなく障害者も含めた福祉の考え方や社会保障などについても学び、介護って技術を学ぶだけじゃないんだと実感しました。1年後期からは施設研修や介護実習がスタート。訪問介護の実習では、利用者さんの日常生活を尊重することの大切さを学びました。ここまではお手伝いしていいけど、ここからは手を出してはいけないとか……先生が授業で話していた「利用者さんの自立を支援する介護」が少しわかった気がします。
岸塚デイサービスの研修では入浴介助について学びました。普段自分で着替えができる人でも、入浴後は疲れてしまって着替えが難しくなるため、入浴介助が必要になることがあるそうです。また、小さい頃に遊びに行っていたデイサービスは元気な人が多く楽しいイメージだったけど、特別養護老人ホームの研修では要介護度4〜5の利用者さんが多く、体を動かすことやコミュニケーションが困難な人を支える責任を痛感しました。
落ち込むこともあるけれど介護職の素晴らしさを実感する日々
─介護の現場を経験して初めて知ることも多いのではないでしょうか?
村井実際に利用者さんと接してみると、介護って簡単じゃないですね。いま介護老人保健施設で6週間の介護実習の真っ最中なんですが、ベッドから車いすへの移乗介助を授業で習ったとおりにやってもなかなかうまくいかなくて、落ち込むこともあります。
岸塚私が担当しているのは小柄な女性なのでなんとか移乗介助できているけど、男性や体格がいい利用者さんをちゃんと支えられるかな、と心配になりますね。食事の介助中にちょっと咳き込んだだけでも「喉に詰まらせた!?」とハラハラするし……職員さんは簡単にやっているように見えるけど、実際は難しいことだらけです。
村井移乗介助が不安すぎてずっと緊張していたんですが、ある職員さんから「利用者さんを介助するというより、一緒に楽しむ気持ちでやってごらん」とアドバイスされたんです。ふと周りを見てみると、職員さんたちがみんな楽しそうで、リラックスして利用者さんに接していることに気づきました。介護職が緊張していると利用者さんも緊張しちゃいますよね。それからは、少し肩の力を抜いて利用者さんに向き合えるようになった気がします。
岸塚職員さんと利用者さんが楽しそうに話しているのを見ると、人と人の絆を感じるんですよね。これこそが介護職の素晴らしさなのかもと思えて、なんだか涙が出てきちゃいます。私たちは利用者さんが楽しく幸せに暮らせるようにお手伝いするけど、「ありがとう」「おいしいよ」という何気ない言葉をかけてもらうだけで、自分の方が楽しく幸せな気持ちになります。介護は相手にしてあげることだけじゃなく、相手から受け取るものもたくさんあるんだなあ、と思うようになりました。
その人らしい生活を支え明るい笑顔を創造できる介護職
─将来どんな介護職になりたいですか?
岸塚介護は単に身の回りのお世話をすることではなく、利用者さんがその人らしく自立した生活をできるだけ長く続けられるようサポートすることだと学びました。利用者さんが自分でできることをひとつでも多く維持できるよう、ほんとうに必要な介護を提供できるようになりたいです。そして、利用者さんはもちろんご家族や職場の仲間など、自分と関わるすべての人を笑顔にできる介護職になれればいいなと思います。
村井実習先の職員さんで、その人が入ってくるだけで場の雰囲気がパッと明るくなる人がいます。その人が話しかけると利用者さんが笑顔になって、すごく素敵だなあと思います。私もそんなふうに、明るく楽しい雰囲気をつくりだせる介護職になりたいです。
世間のイメージに惑わされないで!介護は発見と楽しみにあふれている
─介護職に興味を持っている中学生や高校生の皆さんへメッセージをお願いします。
村井介護の仕事は身体や生活の介助だけでなく、介護記録の作成やレクリエーションの企画などさまざまな業務があり、責任の大きい仕事だなという思いは私の中にもまだあります。でも実習を通して、楽しいこともたくさんあると思えてきました。利用者さんの体調や性格、好きなもの、やりたいことは一人ひとり違うけど、みんなが楽しく幸せな気持ちで過ごせる居場所を提供するために、「利用者さんと一緒に楽しむ」介護を一緒につくっていきましょう!
岸塚世間の人の多くが「介護の仕事はつらい・きつい・汚い」というイメージを持っているかもしれません。でも実際にやってみると、思いがけない発見や楽しみがたくさんあるんです。「いつもは食事の介助が必要な人が今日は全部ひとりで食べた!」とか「便秘がちだった人がスッキリ排泄できた!」とか、小さな変化に大喜びしたくなる感覚は、経験しないとわかりません。職業体験などのチャンスがあったら、ぜひ参加してみてください。リアルな介護を知れば、きっと前向きな気持ちになれると思います!