「愛し愛されることが介護の原点」
先生の言葉に心を揺さぶられた
─介護職に興味を持ったきっかけについて
教えてください。
山根母が介護福祉士としてグループホームや特別養護老人ホームで働いていて、小学生の頃からよく職場に遊びに行っていました。おじいちゃんおばあちゃんと話したり、施設のイベントで寸劇に出演させてもらったり、その頃は「なんだか楽しいところだな」という気持ちでした。中学生になって特別養護老人ホームの職場体験に参加し、改めてお年寄りと接することが好きだと実感したんです。母に相談したら「介護は絶対になくならない仕事だから、将来的にも安心だよ」と勧めてくれました。トリニティはオンライン面談の雰囲気やオープンキャンパスがすごく印象的で、「ここで学びたい!」と思ったんです。
奥田僕はもともと人と話すことが好きで、子どもやお年寄りと関わる仕事がいいなと思っていました。看護師として働く母にも「あんたは介護職に向いとるよ」と言われ、介護の道に進みたかったのですが、家庭の事情で高校卒業後は一般企業に就職。でもやっぱり諦めきれなくて「介護職に就きたい」と周囲に話していたら、介護福祉士修学資金貸付制度を使えるトリニティを勧められました。山根さんと同じく、入学の決め手はオープンキャンパス。先生の体験談を聞いて「介護ってカッコいい!」と衝撃を受けて、すぐに会社を辞めたんです。
─おふたりの心をそれほど揺さぶったのは、
どんなお話だったんですか?
奥田認知症が進んでも孫を大切に可愛がったおばあちゃんと、おばあちゃんが亡くなった後もおばあちゃんに愛された記憶を支えに生きていく女の子の実話です。「大好きなおばあちゃんを大好きでい続けること、認知症になっても孫を愛し続ける気持ちを受け取ることが介護の原点」という先生の言葉を聞いたら、介護は難しいことじゃない、「人が好き」というシンプルな理由で介護職を目指してもいいんだ、と思えたんです。
山根介護職に就いたら、いつか悲しい別れに直面するかもしれません。でも先生は「涙はその人にしっかり寄り添った証。介護職を目指すなら泣ける人になれ」と言ってくれたんです。その言葉がすごく心に響いて、泣けるほど人に寄り添う介護ができる人になりたいと思いました。
地域福祉を肌で学び
座学の知識を実践する
─入学後はどのようなことを学んでいますか?
奥田トリニティには座学や施設実習のほかに、ボランティア活動を通して地域のお年寄りと交流する「地域いきいきプロジェクト」という科目があります。僕のグループではお年寄りのさまざまな生活ニーズに応えていて、ある時「一緒に将棋を打ってくれる人はおらんか?」という要望がありました。住み慣れた街で好きなことを続けられるようサポートするのも介護職の役割。自宅にお邪魔して対戦しましたが、コテンパンに負かされました(笑)。
山根「コミュニケーション技術」という科目で会話が難しい人とコミュニケーションするスキルを学び、グループホームの実習ですごく役に立ちました。感情失禁(感情を抑制できず、わずかな刺激で泣いたり怒ったりする状態)でうまく言葉を発することができない利用者さんがいて、初めは話すのが怖くて避けていたんです。でも授業で習ったことを思い出し、思いきって話しかけてみたらしっかり応えてくれました。それまで軽度認知症の人と接した経験しかなかったので、一歩踏み込んだ介護を考えるきっかけになったと思います。
現場の課題を知って考えた
これからの介護に願うこと
─実習で介護の現場を経験し、
どんなことを感じましたか?
奥田介護施設ってお年寄りがレクをしたり、ワイワイおしゃべりを楽しんだりしているイメージを描いていたのですが、僕がお邪魔した施設は職員さんが忙しそうで、介護の現場は多くの人手を必要としていることを実感しました。
山根ほんとうに職員さんが忙しそうで、一人ひとりの利用者さんとじっくり関われる時間が増えるといいなと思いました。グループホームの実習で出会った利用者さんのことは忘れられません。その人は全盲と難聴を抱えていて、通常の会話によるコミュニケーションが困難でした。そこでその人の手のひらに「山根です」「学生です」と書いて挨拶しているうちに、「ああ、あの子ね」という反応を見せてくれるようになったんです。自分を受け入れてもらえた気がしてうれしかったです。職員さんも利用者さんももっとコミュニケーションを楽しめるよう、私も力になりたいと思いました。
奥田現場の課題を解決しようと頑張っている職員さんの姿も印象的でした。訪問介護実習での際に「君たちが勉強している最新の技術を私たちにも教えて」と言っていただき、現場の課題と向き合ってより良い介護を目指す姿勢に敬服しました。僕たちはベテランの人々に学んで経験を積んでいく立場ですが、学生として学んでいることをアウトプットすることで、現場のお役に立てればうれしく思います。
何気ない日常を重ねる喜びを知った
理想の介護を目指す夢が生まれた
─介護を学ぶ中で、
介護職のイメージや考え方に変化はありましたか?
山根高校生の頃は「介護職に就いたら相手のためになんでもしてあげたい」と思っていたけれど、その人ができることを尊重し、できないことをサポートすることの大切さを理解できるようになりました。また、実習で現場の忙しさに直面して思い出したことがあります。中学生の頃に曽祖母が施設に入所していて、終末期に会いにいくのをためらっているうちに亡くなってしまったんです。その時すごく後悔して、一緒に生きている人と過ごす時間を大切にしたいと思うようになりました。利用者さんと目が合ったら笑いかけるとか、ひとりで寂しそうにしていたら話しかけるとか、何気ない日常の関わりを積み重ねていけるようになりたいです。
奥田ただお年寄りの身の回りのお世話をするだけじゃない、奥が深い仕事だなと思うようになりました。拘縮(寝たきりなどで筋肉が縮んだり関節が固まってしまう状態)がある利用者さんも、ケアのやり方次第で機能が回復したり、歩けるようになることがあるそうです。自分の技術を高める努力が利用者さんの変化という形で報われるのも、介護の仕事の面白さだと思います。また、実習を通して人手不足や技術改善などの課題があることを知り、「自分の手で施設を設立して、働く人も利用者さんも幸せになれる理想の介護を実現したい!」という大きな目標ができました。
働く人も利用者さんも幸せに。
一緒に介護の未来を変えよう!
─介護職に興味を持っている中学生や
高校生の皆さんへメッセージをお願いします。
山根介護職は、利用者さんの日常生活から人生そのものまで寄り添い、一緒に生きていける仕事だと思います。これからは介護の負担を減らす先端技術の導入が進むと言われているけど、利用者さんの表情や顔色で体調を推し量ったり、小さな変化に気づいてあげられるのは人間だけ。人が人を支えてこそ味わえる喜びや感動を、ぜひ知ってほしいと思います。
奥田介護は「きつい」「大変」と言われることが多いけど、知識や技術を活用したり、介護ロボットの導入が進めば仕事の負担は軽くできるはず。自分の努力が利用者さんの変化に反映されるやりがいもあるし、泣いたり笑ったり感動したりする毎日は自分を成長させてくれると思います。労働環境や収入など課題もいろいろあるけど、「働く人も利用者さんも幸せになれる施設」を目指して僕も頑張るので、一緒に介護の未来を変えましょう!