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介護を学ぶ学生にインタビュー

利用者との信頼関係を
積み重ねることが、
“ありのまま”過ごせる
介護を可能に。

純真学園大学 保険医療学部 検査科学科

河野 瑞希さん

認知症を患い、社会から孤立した一人の女性のために「居場所」をつくる——。そんな思いから1991年に介護事業をスタートした「宅老所よりあい」は、以来30年以上にわたり多くの利用者を支えてきました。 以前、母が働いていた介護施設を見ていたという河野さんが、今回こちらの施設で2日間就業体験してくれました。介護の仕事に対するイメージはどう変わったのでしょうか。

母の働く介護の現場を見てきた経験から、介護職に興味

介護に興味を持ったきっかけを教えてください。

小学校低学年の頃、介護職として働く母が夜勤の時に、職場の老人ホームへ一緒に行って泊まったりしていました。中学生になってもたまに遊びに行っていて、自然とお年寄りと接することが好きになり、母の仕事である介護にも興味を持つようになったんです。

今回、宅老所よりあいの就業体験に応募されたのはなぜですか?

「人の役に立ちたい」という思いがあり、現在は大学で臨床検査技師になるための勉強をしています。医療に携わる上で、母の職場以外にも介護の現場を見ておいた方が良いと思い情報を集めていました。たまたま就業体験募集のページを見つけて、そこから「宅老所よりあい」のウェブサイトにたどり着き、楽しそうな雰囲気の写真を見て、体験してみたくなりました。

「話す」ことから、少しずつ築き上げていく信頼関係

今回の体験内容について教えてください。

朝、現地に集合し介護職員さんに挨拶をしてから、この場所で大切にされていることや、今日やることなどについて説明などオリエンテーションを受けました。その際、職員さんから「この2日間の就業体験では、利用者さんと話をして関係性を構築してください」と言われました。

「話すだけなら楽かも」とは思いませんでしたか?

かえって戸惑いました(笑)。利用者さんに対して自分から積極的に話しかけた方がいいのか、それとも職員さんが最初に話題を振ってくださるのかがわからず、オリエンの時は緊張していて聞きそびれてしまって……。少し不安な気持ちのまま利用者さんの隣に座ったんですが、職員さんが横について皆さんに私を紹介してくださったので、自然な形で会話に入ることができ、すごくありがたかったです。おばあちゃんの身の上話を聞いたり、「大学では何を勉強しているの?」と質問されたり、本当の孫のように接していただきました。
実際、入ったばかりの職員さんには最初の1カ月間は補助業務をさせず、まずは利用者さんとの対話を通して関係づくりに徹すると聞いて驚きました。でも確かに、信頼関係が築けていない人に介護されるのは利用者さんも不安なはず。そこから始めるのは当然のことだと納得しました。

お母様の職場と比べて、何か気付いた点はありますか?

デイサービスに来られる利用者さんは、自分でできることが多いということを知りました。利用者さんが自分の家の中にいるように一人で立ち上がってトイレに行くのを見た時はびっくりしました。要介護のレベルによって介護する人の身体的な負担も異なるようです。母の職場はグループホームなのですが、自力で起き上がれない方もたくさんいて、体力を使うお風呂の介助なども見てきました。この施設では私が想像していたほどは体を使うお仕事はなかったように感じました。

糸島の海を眺めながら、利用者と気持ちが通い合った瞬間

皆さんと一緒にドライブにも行かれたようですね。

ランチタイムに近所のボランティアさんの手作りごはんを利用者さんと一緒にいただいた後、数名のおばあちゃんたちと一緒に、糸島へドライブに出かけました。こういった施設でドライブに行くなんて思ってもみなかったので驚きました。

おばあちゃんたちの様子はいかがでしたか?

車を停めて、外へ出て利用者さんたちと散歩をしながら海を眺めていたんですけど、私が「暑いですねー」と声を掛けると、おばあちゃんが笑顔で「そうね」「海がきれいだね」などと答えてくださったのがうれしかったです。海を見ているおばあちゃんたちの表情がどんどん明るくなっていくのがわかり、私自身も「来て良かった」と充実感を味わえました。

無理強いはせず、家族のようなさりげなさで居場所をつくる

就業体験をしてみて、これまで抱いていた介護のイメージと違ったところはありますか?

一般的に介護施設といえば、食事やおやつ、軽い運動やお遊戯など、利用者がスケジュール通りにみんなそろって何かをするイメージがありました。でもこちらの施設では決められたことを決められた時間にするのではなく、当日来た利用者さんの様子を見ながら、一人ひとりのやりたいことに合わせて内容や時間、対応などを変えています。利用者さん個人の意見や意思が尊重されていて、やりたくないことは決して無理強いしないところが良いと思いました。

丁寧な分、職員さんの仕事も増えそうですね。

宅老所よりあいは一般的な介護施設と比べて職員の数が多いので、こうした手厚い対応も可能なのかもしれません。働く人にとっても肉体的な負担が少ないのも良いと思います。

職員さんたちの働く姿を間近で見てどう思いましたか?

すごいと思ったのは、職員さん同士はほとんど話さないのに、利用者さんに次は何をしてもらうか、アイコンタクトで合図しながら動いていたこと。その動きがとても自然でさりげなく、あまり仕事然としていないんです。「おうちにいるような」緩やかな空気感は、こういうところから生まれているのかな、と思いました。職員さんが利用者さん一人ひとりにきちんと向き合い、強制をしたり口うるさく言ったりせず相手の話に耳を傾けるところも素敵でした。時々、隣にいるおばあちゃんに話を振って、輪の中に入れてあげようとしている場面も印象に残っています。

今回の就業体験を、将来にどうつなげていきたいですか?

無理強いせずに利用者さんの話を聞いて、そこからどうしたら心地よく過ごせるかを考え歩み寄る職員さんの姿勢は、私が目指す医療の世界でも模範にしたいと思います。ここで得たことを忘れずに、たくさんの人と向き合って仕事をしていきたいです。

これから介護の世界に進みたいと思っている人にメッセージをお願いします。

いろいろな施設を回って見学することをお勧めします。老人ホームやデイサービスといった施設の種類や場所によって、規模や取り組み、大切にされていること、雰囲気なども全く異なります。気になるところはまず見に行って、自分に合うところを見極めるようにしてください。

介護職についての質問

介護のしごとって、どんな仕事内容?

仕事の内容は非常に多様です。

施設介護員

介護施設の利用者がより自立した生活を送れるよう援助します。生活全般の自立が難しい場合には、食事、入浴、排泄をはじめ、身体介護など様々なケアを行います。その他にも、利用者が楽しめるレクリエーションやイベントを行ったりもします。

訪問介護員

利用者の自宅を訪問して、身体介護(食事、寝返りの介助、入浴、排泄、衣服の着脱など)や生活援助(調理、洗濯、掃除、買物)等を行います。

この他にも、介護サービスの調整や計画を行うケアマネジャー、利用者の相談に応じる生活相談員、利用者の身体機能回復をサポートするリハビリ職、健康管理などを行う看護職、利用者の栄養指導などを行う管理栄養士、介護事業所・施設の事務全般を担当する事務関係職などがあります。

資格が無くても、すぐに働ける?

はい。大丈夫です。老人ホームなどの施設内で介護職として働く場合は、無資格でもできることがたくさんあります。ただし、訪問介護に従事するには研修の修了などが必要です。
仕事は、「生活援助」と呼ばれる仕事(食事の支度、掃除、洗濯、買物、薬の受け取り、見守りなど)と、身体介護と呼ばれる仕事(食事、着替え、服薬、入浴、排泄、歩行介助など)があります。基本的な知識やスキルが学べる介護職員初任者研修を修了すると、より幅広い介護の仕事に携わることができます。
また、国家資格である「介護福祉士」の資格を取得すると、介護についてより専門的な知識と技術を習得していると認められます。
資格取得の支援をしてくれる施設・事業所もたくさんあるので、働きながら資格取得を目指し、キャリアアップしていくことも十分可能です。
なお、2024年4月からは「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられる予定です。

10代20代の同年代の人があまりいない印象で、
職場になじめるか不安です。

確かに、介護職に従事する人は40代50代が最も多いですが、若い人が中心となって運営している事業所もあります。
同年代の方と働きたい場合は、興味のある事業所のホームページやSNSを見て、若い人が多そうな事業所を選んでみてください。事業所が実施している職場体験も、雰囲気を知るために活用することをオススメします。
また、人生の先輩と一緒に働くことで得られることも多いので、あえて同年代の少ない事業所を選んでみるのも良いかもしれません。

介護職を目指す方法

無資格で就職する

無資格でも、老人ホームなどの施設であれば介護の仕事に携わることは可能です。
まずは施設で働いてみて、介護のしごとの内容を理解し、働きながら資格取得を目指してもよいでしょう。
施設ではなく、利用者の自宅に行って介護サービスを提供する訪問介護の場合は、無資格で働くことはできません。訪問介護事業所でホームヘルパーとして働くには、介護職員初任者研修の修了が必要です。
(生活援助のみの提供であれば、生活援助従事者研修修了にて従事できます)

求人中の施設を探す:ケアワークナビ求人中の施設を探す:福祉のお仕事

「入門的研修」を修了してから就職する

「入門的研修」では、介護の基本的な知識や技術を身に着けられます。また、介護未経験者が介護分野へ参入する際の不安を払拭できる内容となっています。「入門的研修」は各自治体にて実施されています。自治体ごとに研修の日数や時間数に違いがありますので、詳しくは右記のリンクよりご確認ください。

入門的研修について

養成施設等で「介護福祉士」資格を取得してから就職する

介護福祉士資格は、介護に係る一定の知識や技能を習得していることを証明する唯一の国家資格です。介護福祉士資格を取得するには大きく2つのパターンがあります。

  1. 専門学校・短期大学・大学などの養成施設を卒業し、介護福祉士国家試験に合格

  2. 福祉系高等学校を卒業し、介護福祉士国家試験に合格

なお、「実務経験3年以上」「介護福祉士実務者研修修了」の2つの条件を満たせば、働きながら介護福祉士の受験資格を得られます。

養成施設を探す:公益社団法人日本介護福祉養成施設協会
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