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介護を学ぶ学生にインタビュー

あらゆる人が役割を持つ
交流の場で、
心豊かに暮らせる
“開かれた介護”を体感

東北学院大学 経済学部 経済学科

笠原 海飛さん

高齢者向け住宅をはじめ、看護小規模多機能型居宅介護事業所や障害者就労継続支援B型事業所、保育園、飲食店などの機能が集約された、仙台市若林区の「アンダンチ」。高齢者や障害者、子どもたち、そして地域の人たちが自由に交流する多世代複合施設です。 今回、こちらにある高齢者向け住宅でさまざまな就業体験をしてくれた笠原さんに、介護の現場を見た感想や、介護についてのイメージの変化などを伺ってみました。

祖父母との関わり方を考えたことがきっかけで福祉に興味

介護に興味を持ったきっかけを教えてください。

現在、大学3年生なのですが、目指す職種がまだ決まっていません。今はいろいろな職業を見て、体験して進路を絞り込もうと考え、これまで金融や人材派遣、不動産などのインターンに参加してきました。福祉に興味を持ったのは、自分の祖父母と将来どう関わっていくかを考えたことがきっかけです。学んでいるのは大学の経済学部経済学科ですが、福祉の問題も経済と無関係ではありません。社会の高齢化が進む中、福祉の実態について知っておくことは重要と考え、就業体験の募集を見つけて応募しました。

地域の人たちも集う、開放的な施設のたたずまいに驚く

実際に現場を訪れて、施設を見た第一印象はいかがでしたか?

介護施設と聞いてビルやホテルのような外観を想像していたので、高齢者住宅がおしゃれな低層の建物で驚きました。広い敷地内には、看護小規模多機能型居宅介護事業所や障害者就労継続支援B型事業所、一般の人も入れる食堂などが集まっています。食堂の2階には保育園もあり、建物に囲まれた庭ではヤギを飼っていて地域のマスコットになっていたり、高齢者住宅の入り口横には近所の子どもたちに人気の駄菓子屋さんがあったり、福祉施設っぽくない雰囲気がとても意外でした。

今日はどんなことを体験されましたか?

最初にオリエンテーションで、施設の概要や取り組んでいること、今日の体験内容について説明を受けました。その後、職員の方に同行して入居者さんのお部屋の掃除をサポートしました。職員さんが掃除をするのかと思ったら、ここでは障害者就労継続支援B型事業所の利用者さんが行っていました。掃除の最中に動かせないものがあったら職員さんが動かすのをサポートするなど、あくまで支援にとどめて自立を促しているそうです。それから昼食配膳のお手伝いをして、午後から入居者さんとコミュニケーションを取りました。

最初に入居者さんとお話をした時は緊張しませんでしたか?

はじめは少し緊張しました。でもワクチン接種会場のアルバイトで高齢者とお話をする機会が多いためか、今日も一人ひとりにちゃんと向き合えたと思います。普段は大学で同じ年代の学生としか交流していないので、入居者さんから話しかけられ、本当の孫のように接してくださった時は、とてもうれしくなりました。

利用者から飛び出す本音に、介護の未来を改めて考える

その後のレクリエーションでは何をしましたか?

毎週火曜日の午後は音楽療法の時間があるそうで、私も別の職員さんと参加し、お手伝いしました。電子ピアノの演奏に合わせて参加した入居者さん全員で大合唱。歌詞が書かれたプリント用紙を配って、1 曲終わるたびに回収していると、まるで小学校の頃に戻ったみたいな懐かしい感覚になりました。歌うたびにどんどん笑顔になっていく入居者さんたちを見ていたら、私まで楽しい気分に。この時間が、今日の体験の中で一番印象に残っています。

今日は最後にビアガーデンのイベントがありましたね。

15時頃から準備をお手伝いして、入居者さんの輪の中に入ってお話をしました。お酒が入っていたこともあり、皆さんからは本音が飛び出すことも。中には介護の仕事に対する厳しいご意見もあり、高齢化の問題に対して社会が今後どう進んでいったらいいのか、また介護従事者の待遇面などに国がどう対処していくのか、といったことを改めて考えさせられました。

認知症の方への接し方や心構えを学んだ、実りある一日に

実際に施設をご覧になって、介護のイメージは変わりましたか?

就業体験をする前は、認知症の影響で言動が不安定になっている方が多いのかな、と思っていました。今日一日、実際に利用者さんとお話をしたりレクリエーションのお手伝いをしたりしましたが、皆さん笑顔で生活を送っているように感じました。

現場で職員さんの仕事ぶりを見てどう思われましたか?

以前は、介護といえば寝たきりの人のお世話など精神的にも肉体的にも疲れるきつい仕事が多いとか、淡々とお世話をするだけのドライなイメージを持っていました。でもこちらで職員さんの働く姿を見ていると楽しそうで、おじいちゃんやおばあちゃんたちに対しても一人ひとりに合わせて、まるで自分の親戚のように接している姿が印象的でした。もちろん、今回はごく一部しか体験していないのでそう感じたのかもしれませんが、終始楽しい就業体験でした。

この経験は、将来へつなげていけそうですか?

代表の方のお話を聞き、認知症は「病名」ではなく、いくつかの病気が重なって現れる「症状」のことだと知りました。そして治療薬の開発が難しいことや、だからこそ社会で受け入れるための環境整備が必要なことも。この施設では、利用者さん一人ひとりが自立を目的として支えあうことを第一に考えているところが、とても良いと思いました。今日は認知症が進行している方から同じ質問を何度もされる場面がありましたが、あらかじめ想定して心構えをしておけば、落ち着いてきちんと対応できるということがわかったのは、私にとって大きな収穫です。これからは認知症の方への関わり方や接し方も変わると思いますし、ここで得た学びは、将来進むべき道を決める上でも役立てられそうです。

介護職についての質問

介護のしごとって、どんな仕事内容?

仕事の内容は非常に多様です。

施設介護員

介護施設の利用者がより自立した生活を送れるよう援助します。生活全般の自立が難しい場合には、食事、入浴、排泄をはじめ、身体介護など様々なケアを行います。その他にも、利用者が楽しめるレクリエーションやイベントを行ったりもします。

訪問介護員

利用者の自宅を訪問して、身体介護(食事、寝返りの介助、入浴、排泄、衣服の着脱など)や生活援助(調理、洗濯、掃除、買物)等を行います。

この他にも、介護サービスの調整や計画を行うケアマネジャー、利用者の相談に応じる生活相談員、利用者の身体機能回復をサポートするリハビリ職、健康管理などを行う看護職、利用者の栄養指導などを行う管理栄養士、介護事業所・施設の事務全般を担当する事務関係職などがあります。

資格が無くても、すぐに働ける?

はい。大丈夫です。老人ホームなどの施設内で介護職として働く場合は、無資格でもできることがたくさんあります。ただし、訪問介護に従事するには研修の修了などが必要です。
仕事は、「生活援助」と呼ばれる仕事(食事の支度、掃除、洗濯、買物、薬の受け取り、見守りなど)と、身体介護と呼ばれる仕事(食事、着替え、服薬、入浴、排泄、歩行介助など)があります。基本的な知識やスキルが学べる介護職員初任者研修を修了すると、より幅広い介護の仕事に携わることができます。
また、国家資格である「介護福祉士」の資格を取得すると、介護についてより専門的な知識と技術を習得していると認められます。
資格取得の支援をしてくれる施設・事業所もたくさんあるので、働きながら資格取得を目指し、キャリアアップしていくことも十分可能です。
なお、2024年4月からは「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられる予定です。

10代20代の同年代の人があまりいない印象で、
職場になじめるか不安です。

確かに、介護職に従事する人は40代50代が最も多いですが、若い人が中心となって運営している事業所もあります。
同年代の方と働きたい場合は、興味のある事業所のホームページやSNSを見て、若い人が多そうな事業所を選んでみてください。事業所が実施している職場体験も、雰囲気を知るために活用することをオススメします。
また、人生の先輩と一緒に働くことで得られることも多いので、あえて同年代の少ない事業所を選んでみるのも良いかもしれません。

介護職を目指す方法

無資格で就職する

無資格でも、老人ホームなどの施設であれば介護の仕事に携わることは可能です。
まずは施設で働いてみて、介護のしごとの内容を理解し、働きながら資格取得を目指してもよいでしょう。
施設ではなく、利用者の自宅に行って介護サービスを提供する訪問介護の場合は、無資格で働くことはできません。訪問介護事業所でホームヘルパーとして働くには、介護職員初任者研修の修了が必要です。
(生活援助のみの提供であれば、生活援助従事者研修修了にて従事できます)

求人中の施設を探す:ケアワークナビ求人中の施設を探す:福祉のお仕事

「入門的研修」を修了してから就職する

「入門的研修」では、介護の基本的な知識や技術を身に着けられます。また、介護未経験者が介護分野へ参入する際の不安を払拭できる内容となっています。「入門的研修」は各自治体にて実施されています。自治体ごとに研修の日数や時間数に違いがありますので、詳しくは右記のリンクよりご確認ください。

入門的研修について

養成施設等で「介護福祉士」資格を取得してから就職する

介護福祉士資格は、介護に係る一定の知識や技能を習得していることを証明する唯一の国家資格です。介護福祉士資格を取得するには大きく2つのパターンがあります。

  1. 専門学校・短期大学・大学などの養成施設を卒業し、介護福祉士国家試験に合格

  2. 福祉系高等学校を卒業し、介護福祉士国家試験に合格

なお、「実務経験3年以上」「介護福祉士実務者研修修了」の2つの条件を満たせば、働きながら介護福祉士の受験資格を得られます。

養成施設を探す:公益社団法人日本介護福祉養成施設協会
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