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介護を学ぶ学生にインタビュー

ICTを積極活用する介護の現場で
入居者の幸せと職員の働きやすさを実感

金沢星稜大学 経済学部 経済学科4年

奥谷 梨雅さん

地域密着型特別養護老人ホーム「ささづ苑かすが」は、ICTの積極的な導入など、介護職員の負担軽減への取り組みを積極的に行っている福祉施設。デジタルやテクノロジーを活用した介護現場の生産性向上と、多岐にわたる職員の待遇改善、多様な人材活用などが評価され、2023年の厚生労働省「介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰」を受賞しました。今回、一日就業体験をした大学生の奥谷さんに、実際に介護現場を見て感じたことや印象の変化などについて伺いました!

祖母を在宅で看取った経験から抱いた介護への興味

介護の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。

幼い頃から祖父母と一緒に暮らし、祖母ががんを患って寝たきりになり、最終的に家族と一緒に自宅で看取りました。両親が高齢になり、介護が必要となったとき、どう対処したらいいのか?自分で介護する、ヘルパーさんなどにお願いする、介護施設にお世話になる―─それぞれの選択肢について、若いうちに知っておいた方がいいかなと思いました。

今回、介護の就業体験に応募された理由はなんですか?

家では祖母の介護を間近に見ていましたが、介護施設の中はどうなっているんだろうという興味がありました。就業体験のお話を聞いたとき、「介護施設の中に入ることができて、お話を聞けて、体験もできるの⁉」と驚き、すぐに応募しました。私は福祉以外の業界に就職が決まっていますが、今回の貴重な体験は違う仕事にも役立つだろうと思っています。

ぬくもりある明るい雰囲気、個人の意思が尊重される環境

今回の就業体験で印象に残ったことはなんですか?

入居者さんの両脇を抱えて、ハグして持ち上げる介護ロボットが印象的でした。介護職員の江尻さんから「介護ロボットで持ち上げたとき、脇の辺りに骨や関節などが当たり、入居者さんはすごく痛みを感じます」と聞きました。私も実際に持ち上げてもらう体験をしましたが、介護される方が痛みを感じるということは知らなかったので、驚きました。

就業体験を通じて、これまで思っていたイメージと違ったことはありましたか?

大学で介護の勉強を始める前は、老人ホームといえばたくさんの人が同じ空間で一緒に過ごす「多床室型」施設のイメージしかなかったので、介護業界に詳しい教授から「ユニット型」施設もあると聞き興味を持ちました。ユニット型は、利用者さんを10人程のグループに分けて介護サービスを提供します。ここなら一人ひとりに対して手厚いケアを行っているのではないかと思い、現場を見てみたくなりました。

午後のおやつの時間には入居者さんたちと楽しそうに話されていましたね。

ごはんやおやつを配膳しているとき、入居者さんたちに「ありがとう」と言われ、うれしかったですね。初めは果物を「食べない」と言っていた入居者さんが、直接お渡しすると「じゃあ、食べる」と前向きになってくださり、自分のちょっとした働きかけが良い影響を与える、やりがいのある仕事だと感じました。

今回の体験を自分の仕事につなげ、介護の魅力を伝えていきたい

施設の印象はいかがでしたか?

この施設では、入居者さんは3つのエリア(ユニット)に分かれて生活されていて、それぞれに戸建ての家のような玄関があって、入口に異なる装飾をすることで、入居者さんが自分の住んでいるエリアに戻れるように工夫されています。施設を建てるときに現場からの意見を聞き、反映しているということで、たとえばトイレは車いすからスムーズに降りられるように動線を考慮して便器が設置されているなど、細かい心配りがされた設備に驚きました。

大変だったことはありましたか?

あえて大変なことを挙げるなら、汚物処置室の匂いでしょうか。でもずっとその部屋で過ごすわけではないし、人が生活する場所である以上は当然だと思いました。

家族や友だちに、今回の就業体験をどのように伝えたいですか?

世の中には、介護の仕事はキツイ・大変というイメージがあると思いますが、むしろスタッフの皆さんは一緒に楽しんでいるように感じました。また、介護ロボットや見守りセンサーなどの進んだ技術も導入されていて、みんなが思っているイメージとは全く違う仕事だよと伝えたいですね。(笑)。

介護の現場を見る機会は、なかなかないですよね?

学校では介護を学ぶ機会がありませんでしたが、介護の現状をもっと早く知っていれば、自分の仕事として選んでいたかもしれません。学校で介護を学ぶ機会を増やしたら、世の中が持つ介護のイメージも変わるだろうなと思いました。

今後、この体験をどう将来につなげていきたいですか?

私は地域貢献ができる仕事に就きたくて、町おこしの取り組みを行っている不動産会社から内定をいただいています。大学1年から学生団体に所属して、地元の課題解決に取り組んできましたが、地域を盛り上げて人の役に立ちたいという思いから選んだ仕事です。今日、介護の現場を見せていただいて、さらに介護に興味を持ち、今後の自分の仕事につなげていきたいと思いました。そして、家族や友だちなど周りの人たちに介護の魅力を伝えていきたい。小さいことですけど、そんなことから始めていけたらと思います。

介護職についての質問

介護のしごとって、どんな仕事内容?

仕事の内容は非常に多様です。

施設介護員

介護施設の利用者がより自立した生活を送れるよう援助します。生活全般の自立が難しい場合には、食事、入浴、排泄をはじめ、身体介護など様々なケアを行います。その他にも、利用者が楽しめるレクリエーションやイベントを行ったりもします。

訪問介護員

利用者の自宅を訪問して、身体介護(食事、寝返りの介助、入浴、排泄、衣服の着脱など)や生活援助(調理、洗濯、掃除、買物)等を行います。

この他にも、介護サービスの調整や計画を行うケアマネジャー、利用者の相談に応じる生活相談員、利用者の身体機能回復をサポートするリハビリ職、健康管理などを行う看護職、利用者の栄養指導などを行う管理栄養士、介護事業所・施設の事務全般を担当する事務関係職などがあります。

資格が無くても、すぐに働ける?

はい。大丈夫です。老人ホームなどの施設内で介護職として働く場合は、無資格でもできることがたくさんあります。ただし、訪問介護に従事するには研修の修了などが必要です。
仕事は、「生活援助」と呼ばれる仕事(食事の支度、掃除、洗濯、買物、薬の受け取り、見守りなど)と、身体介護と呼ばれる仕事(食事、着替え、服薬、入浴、排泄、歩行介助など)があります。基本的な知識やスキルが学べる介護職員初任者研修を修了すると、より幅広い介護の仕事に携わることができます。
また、国家資格である「介護福祉士」の資格を取得すると、介護についてより専門的な知識と技術を習得していると認められます。
資格取得の支援をしてくれる施設・事業所もたくさんあるので、働きながら資格取得を目指し、キャリアアップしていくことも十分可能です。
なお、2024年4月からは「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられる予定です。

10代20代の同年代の人があまりいない印象で、
職場になじめるか不安です。

確かに、介護職に従事する人は40代50代が最も多いですが、若い人が中心となって運営している事業所もあります。
同年代の方と働きたい場合は、興味のある事業所のホームページやSNSを見て、若い人が多そうな事業所を選んでみてください。事業所が実施している職場体験も、雰囲気を知るために活用することをオススメします。
また、人生の先輩と一緒に働くことで得られることも多いので、あえて同年代の少ない事業所を選んでみるのも良いかもしれません。

介護職を目指す方法

無資格で就職する

無資格でも、老人ホームなどの施設であれば介護の仕事に携わることは可能です。
まずは施設で働いてみて、介護のしごとの内容を理解し、働きながら資格取得を目指してもよいでしょう。
施設ではなく、利用者の自宅に行って介護サービスを提供する訪問介護の場合は、無資格で働くことはできません。訪問介護事業所でホームヘルパーとして働くには、介護職員初任者研修の修了が必要です。
(生活援助のみの提供であれば、生活援助従事者研修修了にて従事できます)

求人中の施設を探す:ケアワークナビ求人中の施設を探す:福祉のお仕事

「入門的研修」を修了してから就職する

「入門的研修」では、介護の基本的な知識や技術を身に着けられます。また、介護未経験者が介護分野へ参入する際の不安を払拭できる内容となっています。「入門的研修」は各自治体にて実施されています。自治体ごとに研修の日数や時間数に違いがありますので、詳しくは右記のリンクよりご確認ください。

入門的研修について

養成施設等で「介護福祉士」資格を取得してから就職する

介護福祉士資格は、介護に係る一定の知識や技能を習得していることを証明する唯一の国家資格です。介護福祉士資格を取得するには大きく2つのパターンがあります。

  1. 専門学校・短期大学・大学などの養成施設を卒業し、介護福祉士国家試験に合格

  2. 福祉系高等学校を卒業し、介護福祉士国家試験に合格

なお、「実務経験3年以上」「介護福祉士実務者研修修了」の2つの条件を満たせば、働きながら介護福祉士の受験資格を得られます。

養成施設を探す:公益社団法人日本介護福祉養成施設協会
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