介 護職へ転職した方に
インタビュー
接客業から介護の世界へ。
小さな幸せに寄り添う喜びを知った
東京都板橋区:定期巡回・随時対応型訪問介護看護 アウケアホーム板橋北
介護福祉士 篠田 ちあきさん(45歳)
人と話すことが好きで、学生時代から飲食店などのバイトに明け暮れていた。12年前に夫が亡くなり、親友の助言で8年前に介護職に。小規模多機能型居宅介護や介護老人保健施設を経て今年5月にアウケアホームに入職。車1台とバイク1台を所有し、休日にはバイクで一人旅やツーリングを楽しむ。夜勤明けにバイクを飛ばして北海道まで行ったこともあり。
接客経験を生かして介護の道へ。資格を取得してキャリアアップ
─介護職へ転職したきっかけについて教えてください。
12年ほど前に夫が病気で他界。今後の生き方を考えていた時、親友に「人と密に関わることができる仕事だよ」と勧められて介護職に転職しました。前職は百貨店の和菓子店で販売をしていて、もともと人と話すことや人間観察が好きだったので、やってみようと思いました。
まず小規模多機能型居宅介護で3年間の実務経験を積んだ後、介護老人保健施設に入職してすぐに介護福祉士の資格を取得。仕事の合間になかなか勉強時間が取れなかったので、5年分の過去問題を解きまくって一発合格しました。私、記憶力には自信があるんです(笑)。資格を持っていれば資格手当など給与面でプラスになるし、キャリアアップにもつながるので、取ってよかったと思います。その後老健で4年ほど働き、今年5月に「アウケアホーム板橋北」に転職しました。
多様な働き方ができる定期巡回の訪問介護型サービス
─現在のお仕事について教えてください。
介護が必要な方のご自宅を定期巡回する訪問介護型サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)を提供しています。業務内容は利用者さんによってさまざまですが、排泄介助や移乗介助、食事介助などの身体介護を中心に、状況に応じて掃除や洗濯、買物代行などの生活支援を行います。一般的な訪問介護は1回あたりのサービス内容や時間、料金が決まっていますが、定期巡回は24時間365日対応可能な要介護度別の月額定額制。必要に応じて何回でも利用していただけますが、ケアの内容によっては1時間くらいかかることもありますし、安否確認など最短5分で終わることもあります。
勤務は早番・遅番・日勤・夜勤の交代制。出勤するとスタッフ間で情報の申し送りを行い、各自の訪問ルートを回ります。訪問件数が少ない時は他のルートのフォローに入ることも。電動自転車で回るんですけど、坂道の多い地域はちょっと大変。最初の頃は毎日脚がつっていました(笑)。月3〜4回の夜勤がありますが、人によっては夜勤のみ、日勤のみのシフトもあり、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方ができます。
認知症の方への接し方、看取りの姿勢。利用者さんから学んだこと
─これまでのお仕事の中で、印象的なエピソードがあればお聞かせください。
小規模多機能型居宅 介護の時、職員が接しても頑として動かないのに、なぜかいつも「篠田を呼べ」とご指名される方がいました。最終的に特養に入所されることが決まった時、ポツリと「もう篠田に会えなくなるんだな」と言われたことは強烈に覚えています。私はその方があまりに理不尽な振る舞いをすると諌めることもあったんですが、認知症だからといってお茶を濁すのではなく、人間として対等に向き合う姿勢を信頼してもらえたのかもしれません。
認知症の症状はほんとうにさまざまで、一人ひとりの状態に合わせた対応が必要です。私は和菓子店の時にもお客さまを観察してニーズを探り、最適な接客をするのが当たり前でしたし、カフェでボーッとしながら人間ウォッチングするのが大好きなんです。そのためか、利用者さんのちょっとした言葉から本音を見出したり、小さな体の動きから体調の変化に気づくことも多いですね。
つらかったのは初めて看取りに遭遇した時ですね。感情が揺さぶられて泣きそうになった時、先輩に「あなたが泣いたらご家族が泣けないから耐えなさい」と言われたことがありました。介護に携わる以上、看取りの時はいつか訪れるもの。利用者さんが亡くなることは悲しいけれど、ご家族はもっと悲しいのだから、職員としての立場をわきまえなくてはならないのだと痛感しました。それからは看取りの際には「ようやくご自宅に帰れますね」という気持ちで接するようにしています。
日常の小さな幸せに立ち会える。この業界に入ってよかったと思う
─介 護職のやりがいや魅力について教えてください。
老健(介護老人保健施設)への転職は、住み慣れたご自宅で最後まで過ごしてほしいという思いから、在宅復帰に向けた支援を目指した選択でした。でも私が勤めていた施設では、ご自宅に帰れる方はごくわずかで、自分が描くビジョンとのズレが大きくなり、現在の職場に転職しました。今は自分の家でのびのびと暮らす方々に会えるのがうれしいです。利用者さんと何気ない話をして笑い合ったり、元気になって歩けるようになった喜びを分かち合ったり。この間、遠方に住む息子さんが届けてくれた鰻丼をほおばるおばあちゃんのお顔がとっても素敵だったんです。その様子をスタッフに共有して「よかったね」と笑い合ったり。そういう日常の小さな幸せに立ち会える時「やっぱりこの業界に入ってよかったな」と思います。
残業なしで収入アップ。趣味のバイク旅を満喫中!
─介護職に転職してライフスタイルに変化はありましたか?
和菓子店では売場管理も任されていたので、休日に売場から電話が来たり、年末年始やお盆の時期は定時に帰れず、家に帰ったら泥のように眠るだけの日々でした。今は残業なしで定時に帰れるし、事前に申請すれば長期休暇も取得できます。体の負担が少なくて楽だし、収入も増えて生活が安定しました。介護はチームプレーなので困った時は周りに頼れるし、売上の数字に追われるストレスもありません。人間ですから時にはイラッとすることもありますが、親しい人とお酒を飲んだり、一晩寝ればたいてい忘れます(笑)。
前職では趣味を楽しむ暇もなかったけれど、休日を確保できるようになった今は好きなことを楽しんでいます。私は乗り物を見るのも運転するのも好きで、23歳で免許を取ってからずーっとアルファロメオ一筋。今は車1台とバイク2台を所有しています。年に1回長期休暇を取ってバイクで遠方に行くのが楽しみですが、急に思い立って旅に出ることも。この間は夜勤明けに少し寝てから青森まで700キロくらい走って、フェリーに乗って北海道に上陸しました!
知識と経験を次世代へ伝え 将来は管理者を目指したい
─これからの目標を教えてください。
今の職場は入ったばかりですが、介護業界の職歴はだいぶ長くなってきたので、これまでの知識や経験を若い世代に伝えていければと思っています。最近は新人スタッフの訪問に同行する機会もあるので、人を育てるスキルを磨いていきたいですね。また、あと1年でケアマネジャーの受験資格がもらえるのでチャレンジしてみようと思っています。合格率20%以下という狭き門ですが、ゆくゆくは管理者を目指したいのでぜひクリアしたいですね。
自分で得た情報や 経験が糧になる。勇気を出して飛び込んでほしい!
─介護業界への転職を考えている方へメッセージをお願いします。
ひとつの施設に長く勤めることも素晴らしいけれど、いろいろな介護のかたちを経験するのも大きな学びになります。人から聞いたりネットで見たりするよりも、自分で見聞きした情報や経験は確かなものなので、確実に自分の成長に役立てることができるはず。そしてその情報を周りと共有することで、介護現場の支援の質が向上していきます。未知の世界だからこそ見えるものはたくさんあるので、ちょっと勇気を出して飛び込んでもらいたいなと思います。