介 護職へ転職した方に
インタビュー
営業マンから介護職へ。
誰かの人生の一部になれる喜びを知った
北海道江別市:社会福祉法人 北海道友愛福祉会 静苑ホーム
特養介護職 竹原 亨さん(36歳)
空調機器販売会社の営業職として5年間勤務。転職活動の一環で介護職員初任者研修を修了し、
2012年に静苑ホームに入職。現在は特別養護老人ホームの介護職として働いている。
家族構成:妻・長女(9歳)・長男(7歳)
東日本大震災の経験が仕事や人生を見つめ直すきっかけに
─竹原さんは介護職に就く前は営業マンだったそうですね
高校卒業後に札幌の空調機器販売会社に就職し、エアコンの法人営業に配属されました。当時は働いて収入を得ることが目的で、営業職になりたくて入社したわけではなかったんですけど、初めてエアコンが売れた時はうれしかったですね。初対面の人と話すことが苦にならなくなったのも、営業を経験したおかげだと思います。でも慣れてくるとそれが当たり前になり、仕事がマンネリ化してきたなあ、と感じていました。
転機が訪れたのは2011年3月11日。東北エリアの営業を任されて宮城県に滞在していた時、東日本大震災が発生しました。自分も被災したんですが、翌週に取付工事を控えていたお客さまが津波で亡くなったと知った時のショックは大きかったですね。「人生はいつどうなるかわからない」という現実を突きつけられ、それまでの価値観が大きく揺らいでしまったんです。それから「モヤモヤしたままなんとなく働き続ける人生でいいのか」と自問するようになり、いったんリセットしたくなって24歳の時に退職しました。
利用者さんの 笑顔にふれて転職の迷いが吹っ切れた
─大変な経験をされたんですね。その後介護業界へ転職したのはどんなきっかけだったのですか?
「次こそはほんとうにやりたいと思える仕事がしたい」と思ってハローワークに通っていた時、たまたま介護職のPRポスターを目にしたんです。そういう仕事があることは知っていたけど「大変な仕事」というイメージがあり、自分には無理だろうと思っていました。でも幼い頃に祖父母に可愛がってもらったことを思い出し、「とりあえず資格を取れば役に立つかも」という気持ちで介護職員初任者研修の職業訓練を受講したんです。
実は受講中も介護職に就くことに迷いがあったんですが、1週間の施設実習で利用者さんと接したことがきっかけで踏ん切りがつきました。僕の何気ない言葉に利用者さんが笑顔で応えてくれるのがうれしくて、「もしかしたら自分にもできるかもしれない」と思い、2012年に静苑ホームに入職しました。
ひとりで頑張らなくてもいい。介護職のマインドが生まれた瞬間
─営業職と介護職ではかなりギャップがあったのではないでしょうか?
未経験で入職したので認知症に関する知識が乏しく、最初はわからないことだらけ。認知症のため感情をコントロールできず、一晩中怒り続けている利用者さんがいたのですが、何をしてもダ メで「もう無理だ」と思ったことがありました。でもその時先輩職員がフォローしてくれて、なぜそうなったのか、どうすればいいのか、一緒に考えてくれたんです。
営業マン時代はノルマ達成を目指してひとりで頑張るのが当たり前だったので、介護職になってからも、困ったことがあっても周りに頼ったり、悩みを打ち明けたりできずにいました。でもこの出来事がきっかけで「介護はひとりではできない。チームで取り組む仕事なんだ」と心から理解できたんです。
ひとりで頑張らなくてもいい。困った時は誰かを頼ってもいい。それが結局は利用者さんを守り、ご家族を支えることになる。そう思えるようになったのは、自分にとって大きな変化でした。
きついこともある。でも、それ以上にうれしいことがある
─働く前は介護職にネガティブなイメージがあったとのことでしたが、実際はどうでしたか?
先ほども言った通り、介護はただただ大変な仕事だと思っていました。ひたすら食事と入浴と排泄の介助に追われるんだろうなと。でも実際はそうじゃなくて、もっと大きな楽しみややりがいを見つけられる仕事でした。「ありがとう」という言葉ももちろんうれしいですが、僕の名前を覚えていない利用者さんが「昨日も来てくれたね」と言ってくれることがあるんです。すると自分がその人の人生の一部になれた気がして、介護を通して関わることができてよかったなあと思えるんですよね。
なかなか心を開いてくれなかった利用者さん が少しずつ受け入れてくれるようになったり、利用者さんの課題を解決するためにチームで考えて取り組み、その人にプラスの変化が生まれた時、「これだよ!このために俺は頑張ってたんだよ!」という、なんともいえない達成感が湧き上がってきます。時には想像を超える変化を見せてくれる方もいて、ネガティブなことを考えている暇はありません。
「介護に打ち込むあなたを尊敬している」妻の言葉が背中を押してくれた
─介護職として働くことについて、ご家族はどんなふうに感じているのでしょうか?
ちょうど職業訓練していた頃に妻と出会ったんですが、当時の僕は若くて見た目も派手だったので、介護職だと言ったら「ウソだ〜!」と言われました(笑)。入職してすぐに結婚して長女が誕生。最初はパート職員だったので給料が安く、営業マン時代の貯金も結婚する時に使ってしまったので、金銭的にはすごく大変でした。家族のために仕事のやりがいよりも家計を優先するべきじゃないかと思い、もっと給料の良い仕事に転職しようかと考えたこともあります。でも妻が「ここで働いた方がいい。自分にはできない介護の仕事に打ち込んでいるあなたを尊敬している」と言ってくれたんです。その言葉に背中を押され、3年後に介護福祉士の資格を取得して正職員になりました。応援してくれる家族の存在は大きいですね。これからは子どもたちの教育 費も必要になるし、今後のキャリアアップも考えていかないと。今はケアマネジャーの仕事にも興味があり、資格取得を目指して勉強中です。
しっかり休んでオフを楽しむことが仕事のパフォーマンスを高める秘訣
─介護職は夜勤があって勤務時間が不規則なイメージがありますが、実際はどうですか?
入職したばかりの頃は夜勤と日勤のペースをつかむまで苦労しましたが、慣れてしまえばそれほど大変じゃないです。シフト制なのでカレンダー通りの休みではないけど、分散させてこまめに休めるのでストレスはありません。レジャー施設が空いている平日に出かけられるのもいいですよ!
事業所にもよると思いますが、静苑ホームには年間5日間のリフレッシュ休暇制度があります。日数を分けて取ってもいいし、5日間まとめて土日祝日につなげて長期休暇を取ることもできるので、家族旅行やレジャーもゆっくり楽しめます。上司にも「休める時にしっかり休め」と言われているし、周りの同僚もきちんと有休を消化していますね。オンとオフを切り替えてプライベートを充実させることで、仕事のパフォーマンスもアップすることを実感しています。
今の働き方に疑問を感じているなら介護職に目を向ける価値はきっとある
─転職先とし て介護業界を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
介護の仕事は大変だと思っている人は多いし、僕自身も働く前はそう思っていました。今までネクタイを締めて営業トークしていたのに、いきなり食事や排泄の介助ができるのか、専門学校を卒業した若い子は知識も豊富でしっかりしているのに、自分は中途入職で何もわからず、こんな自分でいいんだろうかと悩んだこともあります。でも誰かの人生に関わって、自分の介護でその方の人生を豊かにできる喜びを知り、不安や迷いが吹き飛びました。転職は大きな決断だけど、自分がここにいて良かったと思える瞬間が必ず訪れるはず。今の仕事や働き方に疑問を感じているなら、介護業界に目を向けてみることをお勧めします!